2021/07/23_電子書籍と紙の本

 今読んでいる新書に「あと五年で電子書籍の売上が紙の本の売上を超えるだろう」ということが書いてある。2018年なので2023年にはそうなるということだ。

 2020年の段階で電子書籍の本市場占有率は25%弱。ココ最近占有率を順調に伸ばしているがそれでもあと2年で紙の本の売り上げを超えるというのはちょっと考えられない。ただ電子コミックの売上が電子書籍の売上増を後押ししているらしく、これからなにかの漫画が爆発的に売り上げることがあったりすればもしかするとあるのかも知れない。

https://hon.jp/news/1.0/0/30504

 しかしもう少し紙の本が粘るような気がする。

 1万部売れたらベストセラーの世界だ。大ヒット漫画となれば別だが小説みたいな紙の本の市場規模は人口1億人とは思えないぐらいに小さい。要するに堅い購買層は程度の差こそあれ読書家と呼ばれるような人たちだ。そして彼らがすぐに電子書籍に乗り換えるとは思わない。

 本好きには本の物質的な側面に特別な感情を持つ人も多い。本棚に並べて鑑賞したい人もいるし、物理的に積ん読しておくことが読書を進めるプレッシャーになる人もいる。何より紙の本と違って電子書籍は気が散る。常にチカチカと発行しているから目がつかれるのもそうだが、読書する以外の機能が付きすぎている。設定である程度維持れるかも知れないが、大抵の電子書籍のリーダーは倍率変更や付箋、引用、ノート、ページ移動のためのバーなどがいつもスタンバイしている。それがちらつくと気が削がれる。本を読むことだけに集中することが少し難しい。何より読書専用のタブレットでもなければ、PCやスマホなどその他の機能が常にスタンバイしている。メールやSNSの通知が来て集中をそがれることもあるだろうし、ゲームのスタミナが回復することもあるだろう。また大きいのはだいたい常に時計が見えていることだ。時刻が表示されていると焦ったり次の予定がちらついて集中できない。アプリによってはページを繰る速度を計測して読了までの予測時間を表示するものもある。それによって読み進められる人はいいが、ペースアップに気を取られて本の世界に沈滞することができなくなってしまう。

 正直言って電子書籍の読書環境はまだまだ発展途上でとても良いものとはいえない。そういうわけで自分はなかなか電子に乗り換えられないし、電子書籍が紙の本の売り上げを超えるのもまだ当分先のような気がするのだ。

 

 もし電子書籍の読書環境が揃ったら。あるいは紙の本の印刷コストを槍玉に挙げ攻撃する言論が増えたら(例えば極端な森林保護論者とか)。もしくは電子書籍のコストが非常に下がったら。例えば半永久的にゼロコストで発電する方法が見つかるとか、電子書籍の市場規模拡大や読書人口そのものの拡大が起こって電子書籍一冊買うためのコストがとても低くなったら、市場は逆転するかも知れないし、紙の本は消えるかも知れない。まあ当分先のことだろうが。