2021/02/23_名前のある部分

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こんばんわ。まずは近況報告のようなもの。

Twitterのフォローを0にしました。タイムラインがあまりにも煩雑で弱ったメンタルでは耐えられなかったから。フォローしていただいて、相互だと思ってくれてる方には申し訳ない。一応フォローの代替としてリスト機能を使ったり使わなかったりする。

ただ正直な話……

・俺が誰のツイートを見てようが見てまいが関係ないし
・鍵アカのくせにちゃんと見ろやとか意味わからんし
・もうTwitterやめたいよね

ただ僕はずるいので、自分のnoteは広告したいし、そのためにもフォロワーがいるTwitterはありがたいと思ってる。僕には広告力がないので、誰かが見て気に入って拡散してくれると、テキストも存在する価値があるから。

いま価値のこと意味って言いかけた。意味と価値って別物だと思うけど、価値のこと意味って言いがち。価値はなくても意味はあるでしょ。価値がないからって意味がないとか(言葉の上だけでも)言ってしまって、無いのと同じように扱ってしまうのはメンタルヘルス的にもよくないよな……などと時々思う。時々なので、よく価値のこと意味って言ってしまう。

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今回のタイトルは「名前のある部分」なので、ちょと強引に話を戻す。

伊藤計劃の『ハーモニー』を先々週あたりに読んで、先週、図書館で『伊藤計劃記録』を借りてきた。『ハーモニー』みたいなSFがどういう思考回路、どういう遍歴のあとで書かれるのかちょっと気になって。

結果は上々。最近MGS、MGS2も履修して伊藤計劃が見えてきた。多分次に履修すべきは『ディファレンス・エンジン』と『ニューロマンサー』。ここまで見ればだいぶ見えてくるんじゃなかろうか。

しかし2008年の『SFが読みたい!』での円城塔とのインタビュー「装飾と構造で乗り切る終末」を読んでいて、伊藤計劃が見えてきても伊藤計劃にはなれないのだろうなと思わされた。タイトルにもある「装飾と構造」というのは円城塔伊藤計劃が文を構成するときのスタイルを表している。円城塔は構造をどんどん詰め込んで文を作る。伊藤計劃は装飾を詰め込んで文を作る。多分、多くの物書きにとって異常なのは一つあれば小説が組み上がるような構造をバンバン使ってしまう円城塔の方なのだろうが、物書き未満の自分が痛感したのは装飾を積み上げていくのがどれだけ難しいのかということだ。例えば、円城塔伊藤計劃のように書けないという話をしている時、こんな事を言っていた。

円城 僕の場合はディテールを細かくしようにも、たとえば銃だと、穴があいている筒で火薬を入れて火をつければよい、というくらいの認識しかなくて。
伊藤 すごくトポロジカルな感覚(笑)。

まさにこれ。銃と言われても素の自分ではあいまいな形状以上のものは想像しないし、そもそも銃が「撃鉄」とか「銃身」とか「名前のある部分」で出来上がっているということに気が付かない。(いまの)僕が小説を書くことになったとしたら多分「ここに銃があります」以上の文は書かない気がする。逆に言うと装飾で文を組み上げられる人は「名前のある部分」に対する感度が高いのかもしれない。少なくとも、知ってか知らずかそうした名前によってディテールを描き出す装飾が出来るようになっている。

変な話、伊藤計劃じゃないことのほうが普通ではないかと思う。普通の人は銃のパーツの名前なんか知らないし、電子レンジとかコップとか机のパーツをどう呼ぶかなんて考えたこともない。机は机コップはコップで、それ以上の名前は必要ないはずだ。だってそれで話は通じるし、最悪「あれ」って指を挿せばいい。だけど、じゃあどうして銃の部分に名前がつくんだろうか。

多分、「普通」じゃない人には必要だからだ。銃を取り扱う人、戦場に居たり、銃器の生産ラインに居たりする人には多分、こういう名前がないと不便なんだろう。知らないけど。

でもそう考えると小説家って変な仕事だ。自分が知ってなくても困らない「名前のある部分」をたくさん知っていることが当たり前になっている。それに読者も読者で、そんな名前普段は使わないし気が付かないのに、小説を読む間は「名前のある部分」に気づいている。そういう装飾がリアルな感じがする。

名前と他者、名前と読者。語りでも記述でもなんでもいいけれど、僕らはテキストを介してコミュニケーションする。すると必然的に名前を使う。名指す。それを通して同じものを見る。見ていることになっている。しかしまた、たとえば小説は名前の数が少ないとリアルな感じがしなくなったり、普通の会話で「重力加速度」とか「宇宙定数」とかが通じなかったりする。

よくわからない。

名前を呼べば、何でもうまくいくような気もするし、名前を読んでも何もうまく行かないような気もする。

そういう事を考えてまた眠れなくなったりする。

この話、通じてるといいんだけど。